夏子2

夏子が男に乱暴されかけたのは中学1年生の7月だった。夏休みに入る直前で、あまり大きな騒ぎにはならずに済んだ。ただやはり小さな狭い町だから、どこかからまことしやかに噂が流れた。ひそひそとした声は嫌でも耳に入った。ただでさえ傷ついた夏子は、さらに好奇の目にさらされることになった。


「夏子はこの町を出たいと思ったことはないの?」
振り向いた夏子は僕の顔をまじまじと見た。
「うーん、どうだろ」
「どうだろうって、自分のことだろう」
またふざけているのかと思って夏子の顔を見ると、いつになく真剣な表情だった。